タクシー運転手の未払残業代請求

タクシー運転手は,長時間運転しなければならないので,

腰やお尻を痛めやすく,交通事故に巻き込まれる危険もあります。

 

 

 

 

大変な労働であるにもかかわらず,賃金が低いことが多いです。

 

 

中には,適切な残業代が支払われておらずに,

最低賃金以下で働かされているタクシー運転手もいます。

 

 

このように厳しい労働環境でがんばっているタクシー運転手が,

未払残業代請求をした東京エムケイ事件を紹介します

(東京地裁平成29年5月15日判決。・労働判例1184号50頁)。

 

 

タクシー運転手12名が会社に対して,未払残業代を請求しました。

 

 

被告会社では,固定給のタクシー運転手と

売上連動型の給与のタクシー運転手がいました。

 

 

このうち,固定給のタクシー運転手の未払残業代について,

被告会社は,固定残業代を支払っているので,

未払残業代はないと主張しましたが,

裁判所は,未払残業代請求を認めました。

 

 

固定残業代とは,実際の残業時間とは関係なしに,

一定の残業を行ったとみなして,定額の残業代を支払うことをいいます。

 

 

ブラック企業は,基本給を最低賃金ギリギリに設定して,

その代りに固定残業代を多くして,長時間働いても,

固定残業代の範囲内で残業代はまかなわれているとして,

労働者に長時間労働を強いるように悪用していることがあります。

 

 

 

 

固定残業代が有効になれば,固定残業代の金額分が

残業代としてすでに支払済みとなり,

固定残業代が残業代の時間単価算定の基礎となる賃金から

外れる結果,時間単価が低くなり,残業代の金額が少なくなります。

 

 

逆に,固定残業代が無効になれば,会社は,

残業代を1円も支払っていないことになり,

固定残業代が残業代の時間単価算定の基礎となる賃金に

含まれることになり,時間単価が高くなり,残業代の金額が多くなります。

 

 

そのため,未払残業代請求事件では,

固定残業代が有効か無効かという論点が激しく争われます。

 

 

固定残業代が有効となるためには,

固定残業代部分と通常の賃金部分が明確に区別されていること

が必要となります。

 

 

東京エムケイ事件では,固定給の労働者の給料の内訳は,

基本給,精勤手当,無事故手当,業務手当,基準外手当に分かれており,

このうち,基準外手当が固定残業代として有効かが争いとなりました。

 

 

被告会社は,基準外手当は,時間外手当,深夜手当,休日出勤手当

を含むものと主張しましたが,給与明細からそのことは明らかではなく,

固定残業代として予定されている時間数または

計算方法が明らかではないとして,

固定残業代部分と通常の賃金部分が明確に区別されておらず,

基準外手当は固定残業代として無効と判断されました。

 

 

固定残業代が争われる事件では,

就業規則,賃金規定,給与明細などを分析して,

固定残業代部分と通常の賃金部分とが明確に区別されているかを

入念にチェックしていくことが重要になります。

 

 

なお,売上連動型給与のタクシー運転手については,

利益配分等の計算方法について,労使の合意に基づいており,

有効であり,固定残業代部分と通常の賃金部分が明確に

区別されていることから,固定残業代は有効と判断されました。

 

 

タクシー運転手の給与体系は,売上連動型の場合,

複雑になっていますので,長時間労働のわりに給与が低いと感じる

タクシー運転手は,一度弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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