追い出し部屋的な配置転換

 

会社は,時として非情な人事異動を労働者に命じることがあります。

 

 

例えば,これまでバスの運転手として働いていた労働者が,

突然,駅のトイレ掃除の業務に配置転換させられたとします。

 

 

 

 

労働者によっては,バスの仕事がしたくて働いていたのに,

トイレ掃除に配置転換されたのでは,

仕事に対するモチベーションが下がってしまいます。

 

 

このように,労働者に対して,

軽微な仕事をさせることによって,

仕事に対するモチベーションを下げさせて,

退職させるように追い込む手法を

追い出し部屋」といいます。

 

 

本日は,このような追い出し部屋的な手法が

争われた相鉄ホールディングス事件を紹介します

(横浜地裁平成30年4月19日判決・労働判例1185号5頁)。

 

 

この事件では,バス運転手の出向を解除して,

出向元へ復職が命じられたのですが,

出向元での復職命令の内容が,

駅のトイレ掃除等だったため,

出向元への復職命令が権利の濫用にあたるかが争われました。

 

 

 

 

まずは,原告らバス運転手には,

バス運転手の仕事以外の業務を命じられることがないという

職種限定の合意があったかが検討されました。

 

 

原告らの業務が,バス運転手の仕事に限定されていた

という合意が出向元の会社との間でなされていれば,

会社は,原告らに対して,

バス運転手の仕事以外の業務を命じることはできないのです。

 

 

この点については,バス運転手が

高度の専門性を有する職種ではないことなどを理由に,

職種限定の合意は認められませんでした。

 

 

就業規則に,配置転換ができる旨の規定が存在するため,

会社は,原告らをバス運転手の仕事以外の

業務に変更できることになります。

 

 

とはいえ,出向先からの復職命令による配置転換が

権利の濫用に該当すれば,無効になります。

 

 

復職命令が権利の濫用にあたるのは,次のような場合です。

 

 

①業務上の必要性・合理性がない場合

 ②他の不当な動機・目的がある場合

 ③労働者に対して通常甘受すべき程度を

著しく超える不利益を負わせる場合

 

 

本件事件では,①出向元による,

出向補填費が営業利益を上回っており,

出向補填費を削減する必要があったので,

復職命令には,業務上の必要性・合理性があると判断されました。

 

 

また,③原告らをバス運転手から,

トイレ掃除などの業務に変更になった点について,

トイレ掃除などの業務は研修などの空き時間にされたものであり,

期間も最大17日間であり,

再出向までの期間に限定されていたことから,

追い出し部屋的な処遇とは認められませんでした。

 

 

そして,長年バス運転手をしてきた原告らが,

バス運転手の仕事から離れることについて,

仕事が自己実現の手段であることを考慮すれば,

原告らの不利益は主観的には相当大きいものの,

そのような主観的な利益は限定的にしか保護されないとして,

復職命令によって,原告らに著しい

不利益は生じていないと判断されました。

 

 

仕事内容が,労働者にとってやる気を失わせるものであれば,

労働者の不利益はとても大きいのですが,

会社の配置転換が追い出し部屋的な対応と評価されるのは,

会社の対応があからさまに悪質な場合などでないと,

難しいのかもしれません。

 

 

 

 

会社の追い出し部屋的な対応が争われた

珍しい事件ですので,紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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