海上自衛隊のパワハラ・いじめ問題

昨年9月,海上自衛隊横須賀基地の

補給艦ときわの艦内において,

男性3等海尉が自殺した事件がありました。

 

 

上官から自殺した3等海尉に対して

パワハラがあったという乗員の証言があり,

海上自衛隊が調査したところ,

艦長から「休むな」という指示があったり,

上官が「死ね」,「消えろ」などと発言し,

ダーを投げつけたなどのパワハラがあったようです。

 

 

 

 

①優越的な関係に基づく,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により,

③労働者の就業環境を害すること

(身体若しくは精神的な苦痛を与えること)

というパワハラの3つの要素にあてはめると,

上記の艦長や上官の言動は,パワハラに該当します。

 

 

今後,事故調査委員会がパワハラの有無や

自殺との因果関係を調査していくので,

どのような調査結果になるのかに注目したいです。

 

 

さて,海上自衛隊における隊員の自殺ですが,

実は過去にも同じような事件があったのです。

 

 

それが,海上自衛隊護衛艦さわぎり事件です

(福岡高裁平成20年8月25日判決・判例時報2032号52頁)。

 

 

 

 

この事件は,海上自衛隊の三等海曹が

護衛艦さわぎりに乗艦中に首吊り自殺したという事件です。

 

 

遺書はなかったものの,自衛隊内のいじめが疑われ,

艦内において飲酒がされていた等の規律違反や,

隊員を丸刈りにしたという指導方法が取り上げられて,

自殺との関連が問題となりましたが,事故調査委員会は,

いじめの事実は認められないという調査結果を公表しました。

 

 

この調査結果に納得できない遺族が,

国を相手に損害賠償請求訴訟を提起しました。

 

 

裁判では,ある上官から

「お前は三曹だろ。三曹らしい仕事をしろよ。」,

「お前は覚えが悪いな。」,「バカかお前は。三曹失格だ。」

などと誹謗されていたことが認定されました。

 

 

そして,閉鎖的な艦内で直属の上司から

継続的に上記のような侮辱的な言動がされることは,

自殺した三等海曹の心理的負荷を過度に蓄積させるものであり,

指導の域を超えるものであると判断されました。

 

 

この侮辱的な言動によって,三等海曹は,

うつ病を発症し,自殺したと認定されて,

慰謝料合計350万円の請求が認容されました。

 

 

他方で,もう一人の上官の「ゲジ2」,「百年の孤独要員」,

「お前はとろくて仕事ができない。自分の顔に泥を塗るな。」

という言動については,自殺した三等海曹との

関係が良好であったことから,

軽口として許容できるものであるとして,

違法な言動とは認定されませんでした。

 

 

海上自衛隊は,航海中,閉鎖された艦内で

仕事と日常生活をしていくので,

人間関係が一度こじれると,逃げ場がなく,

非常につらい状況に追い込まれてしまうことが予想されます。

 

 

 

 

閉鎖された組織ではパワハラやいじめが

生じる温床となりやすいので,

今回の補給艦ときわの事故調査で,

自衛隊のパワハラやいじめの原因が究明されて,

再発防止策が講じられることを期待したいです。

 

 

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