自己都合退職か会社都合退職かの判断基準とは?

会社を退職する場合,自己都合退職か会社都合退職か

が問題となることがあります。

 

 

 

 

雇用保険の基本手当を受給する際,会社都合退職ですと,

給付制限がなく,自己都合退職の場合よりも,

基本手当の給付日数において優遇されています。

 

 

また,退職金についても,自己都合退職の場合には,

会社都合退職の場合よりも,退職金の支給額を減額する

という退職金規定をもうけている会社も多いです。

 

 

ところが,退職金規定に,自己都合退職については

退職金を減額するという条項があったとしても,

どのような場合に自己都合退職になるのかについて

明確な基準を定めている会社は少ないです。

 

 

とくに,給与の大幅な切り下げを通告されたり,

遠隔地配転を命じられて退職するに至った場合,

労働者としては,会社の都合によって退職を余儀なくされた

と考えるのですが,退職に際して,「一身上の都合により」

などと記載された退職届を提出させられるケースも多く,

退職届を形式的にみると自己都合退職となっているときに

トラブルに発展することがあります。

 

 

それでは,どのような基準をもって

自己都合退職と会社都合退職とを

区別するべきなのでしょうか。

 

 

結論としては,退職に至る具体的事情を

総合的に判断して決することになります。

 

 

すなわち,労働者が勤務を継続することに障害があったか否か,

その障害が使用者,労働者のいずれの責任に帰せられるか,

退職の理由が使用者,労働者いずれの支配領域内で

起きた事情によるものか,労働者の自由な判断を困難にする事情が

使用者側に認められるか,といった諸要素を勘案して,

総合的に判断することになります。

 

 

具体的な事件で検討してみましょう。

 

 

労働者が会社に対して,自己都合退職の退職金と

会社都合退職の退職金との差額,及び,

自己都合退職の雇用保険の基本手当と

会社都合退職の雇用保険の基本手当との差額について,

損害賠償請求して,これが認められたゴムノイナキ事件を紹介します

(大阪地裁平成19年6月15日判決・労働判例957号78頁)。

 

 

この事件の労働者は,顧客からのクレームが多いことから,

会社から退職勧奨を受けて,退職願の届出を催促されて,

会社から言われるがまま,一身上の都合により退職するとの

退職願を作成して,提出しました。

 

 

 

会社が,自己都合退職として退職金を支給し,

雇用保険の手続をしたことから,労働者は,

会社都合退職であるとして争いました。

 

 

判決では,労働者が子供の学費や住宅ローンの状況からすれば,

全く自発的に退職を申し出るとは考えがたいこと,

労働者は自分から退職願を作成して持参したのではなく,

会社主導で作成されたこと,会社が退職願を直ちに受理して,

翻意を促すことも引き留めることも一切していなかったこと,

といった事情を考慮して,労働者の退職は

会社都合退職にあたるとされました。

 

 

その上で,会社都合退職として処理すべきところを,

自己都合退職によるものとして退職金を計算し,

離職票を作成するなどの事務手続を行ったとうい限度で,

会社に過失があったとして,会社の行為は不法行為にあたるとされました。

 

 

結果として,労働者には,退職金の差額116万円と

雇用保険の基本手当の差額159万12000円

の請求が認められたのです。

 

 

このように,一身上の都合により退職するという

退職届を会社に提出していたとしても,

退職に至る経緯を検討すれば,会社都合退職になる可能性があり,

そうなれば,会社都合退職と自己都合退職における退職金と

雇用保険の基本手当の差額を請求できる可能性があるのです。

 

 

 

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