退職強要の対処法2

昨日のブログに引き続き,退職強要の対処法

について解説していきます。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201903037645.html

 

 

昨日のブログにも記載しましたが,

退職勧奨の手段・方法が社会通念上相当性を欠く場合に,

退職強要として違法になります。

 

 

 

そこで,録音や日記・メモ,精神科医のカルテの記載などから,

当該労働者が,会社側から,どのような退職強要をされたのかを特定して,

それが社会通念上相当か否かを検討します。

 

 

例えば,エターナルキャスト事件では,

次のような退職強要が問題となりました

(東京地裁平成29年3月13日判決・労働判例1189号129頁)。

 

 

経理の仕事をしていた原告の労働者が,代表取締役から,

「経理の仕事はない。自分で何ができるか考えろ」などと言われ,

労働局のあっせんの申立てをしたり,弁護士に交渉を依頼しました。

 

 

すると,代表取締役は,原告の労働者に対して,

次のことを言いました。

 

 

「弁護士通じて言いやがってよ。何でてめえの口で言わないんだよ。」

「俺はあんたを許さない。別に経理の仕事をしたいならすればいい。

絶対にミスるな失敗したら損害請求する。」

「みんなおまえを最悪って言ってたぞ。みんなを敵に回したんだぞ。

ばかなことをしたな。それで人生駄目にするんだ。」

「こんなレベルでは,小学生の方がまし。」

 

 

代表取締役は,このような暴言を浴びせながら,

壁に向かってペットボトルを投げつけたりして,

今後仕事で重大なミスをしたときは責任をとって

退職するという承諾書を作成するように強要しました。

 

 

 

 

また,会社側は,原告の労働者に対して,

労働条件を正社員からパート社員に変更した上で,

経理担当から清掃スタッフとして勤務するように,

言葉巧みに迫り,これに同意できない場合には

辞職するほかないように仕向けてきました。

 

 

労働局のあっせんや弁護士への依頼など,

労働者が法律で認められた当然の権利を行使したら,

このようなひどい仕返しをしてきたのです。

 

 

原告の労働者は,仕事のミスが多かったり,

仕事のおぼえが悪かった点があるのですが,

だからといって,上記の被告の会社の対応は,

「それをやったらだめだよね」というレベルのものであり,

裁判所は,上記の一連の会社側の退職強要は違法と判断しました。

 

 

そして,被告会社と代表取締役に対して,

30万円の慰謝料の損害賠償請求が認められました。

 

 

これだけひどいことをされたのに,

認められた慰謝料の金額は30万円だったのです。

 

 

残念ながら,パワハラや退職強要の裁判で

慰謝料の損害賠償請求をしても,

それほど高額な慰謝料が認められないのが,

今の日本の裁判の現状なのです。

 

 

そのため,録音などの手堅い証拠があったとしても,

最終的に認められる損害賠償の金額が,

それほど大きくならない可能性もありますので,

裁判を起こすか否かについては,

慎重に判断をすることになります。

 

 

なお,この事件では,会社側からの退職強要によって,

原告の労働者のうつ病が悪化し,

働くことができなくなったことから,

労働基準法19条の「業務上の負傷」に該当することから,

休職期間満了による当然退職扱いは許されないと判断されました。

 

 

 

 

このように,退職強要事件では,

会社側の言動を録音などで記録した上で,

会社側の言動が社会通念上相当か否かを検討し,

損害賠償の金額がいくらくらいになるかの見通しをつけて,

裁判を起こすかを慎重に判断していくことになります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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