デジタルマネーでの給料の支払は認められるのか?~賃金の通貨払いの原則~

現在,厚生労働省は,デジタルマネーで

給料の支払いができるように検討しているようです。

 

 

もともとは,国家戦略特区において,

デジタルマネーでの給料の支払の解禁を考えていたようですが,

今は全国での解禁の話をしているようです。

 

 

デジタルマネーとは,電子情報で支払いに充てられるお金の総称で,

スイカなどのICカードやスマートフォンにチャージできる電子マネーや,

ラインなどのインターネット事業者が手がけるマネーなどのことです。

 

 

 

 

昨年あたりから,日本でも,ペイペイやラインペイなどの

スマホ決済が脚光を浴び,キャッシュレス社会へ動き出しています。

 

 

聞くところによると,中国では,

スマホ決済が既に主流で,

現金を使うことがほとんどないようです。

 

 

なぜ,デジタルマネーでの給料の支払いが浮上したかといいますと,

今後,外国人労働者が増加していくことが見込まれますので,

キャッシュレス社会が進んだ国から日本にきた外国人労働者に対して,

デジタルマネーで給料を支払った方が,

外国人労働者にとってメリットがあると考えられたようです。

 

 

ところが,このデジタルマネーでの給料の支払いについては,

労働基準法24条1項の賃金の通貨払いの原則

との関係で問題があります。

 

 

賃金の通貨払いの原則とは,貨幣経済の支配する社会では

最も有利な交換手段である通貨による賃金支払を義務付け,

これによって,価格が不明瞭で換価にも不便であり,

弊害をまねくおそれが多い実物給付を禁止したものです。

 

 

 

 

労働者は,会社から賃金を受け取って生活しているところ,

会社から受け取る賃金が通貨以外のもので支給されたら,

通貨以外のものの価値が不明であるため,

物と交換することができず,商品を買うことができなくなって,

日常生活に支障が生じることから,会社に対して,

賃金を通貨で支払うことを義務付けているのです。

 

 

そのため,会社は,給料を通貨ではなく,

自社商品で支給することは許されないのです。

 

 

もっとも,賃金の通貨払いの原則は,

労働者にとって不利益な実物給付を禁止する趣旨であることから,

公益上の必要がある場合や,労働者に不利益になるおそれが少ない場合

には,例外が認められます。

 

 

例えば,銀行口座への振込は,労働者の同意があり,

労働者が指定する銀行口座であれば,

賃金の通貨払いの原則に違反しません

(労働基準法施行規則7条の2第1項1号)。

 

 

銀行口座への振込であれば,労働者は,

給料日に,銀行へ行けば,給料を引き出せるので,

不利益はありませんし,計算の手間が省けることから,

給料を現金で手渡すよりも,銀行振込の方が,

会社にとっても,労働者にとっても,便利だからなのです。

 

 

退職金については,金額が高額になることから,

現金の保管や持ち運びに危険が伴うため,

銀行が振り出した小切手で支払うことが認められていますが

(労働基準法施行規則7条の2第2項),

毎月の賃金を小切手で支払うことは,

小切手が一般的に普及している支払手段ではなく,

受け取った労働者に若干の不便を与えるので,

適当ではないと考えられているようです。

 

 

では,デジタルマネーでの給料の支払はどうかといいますと,

労働基準法24条1項では,「厚生労働省令で定める賃金について

確実な方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては,」

通貨以外のもので支払うことが認められると規定されているので,

厚生労働省が賃金として確実に支払われると判断して,

厚生労働省令で定めれば,デジタルマネーでの給料の支払は

可能となります。

 

 

 

賃金の通貨払いの原則の趣旨からすれば,

労働者に不利益が生じないといえれば,

デジタルマネーでの給料の支払は認められると考えられています。

 

 

もっとも,会社が労働者の給料相当額を

資金移動業者へ支払ったものの,

資金移動業者が倒産したために,

労働者に給料が支払われなくなることだけは,

絶対に避けなければなりません。

 

 

そのため,デジタルマネーでの給料の支払を認めるためには,

金融庁が資金移動業者の監督を徹底し,仮に倒産した場合でも,

労働者に給料が支払われる仕組みを構築することが必要であると思います。

 

 

デジタルマネーでの給料の支払については,

今後の動向を注目していきたいと思います。

 

 

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