250万円の慰謝料請求が認められたパワハラ事件

労働事件の法律相談で最近多いのが

パワハラや職場の嫌がらせ,いじめの問題です。

 

 

もっとも,パワハラについては,

①パワハラの事実を証明できるのか,

②違法なパワハラと評価できるのか,

③損害額はいくらになるのか,

という3つのハードルがあるため,費用対効果の関係で,

弁護士に解決の依頼をするところまで至らないことも多いです。

 

 

 

 

①パワハラの事実を証明できるかについては,

録音,病院のカルテ,日記などをもとに判断していきますが,

②違法なパワハラと評価できるのかと,

③損害額はいくらになるのかについては,

ケースバイケースで判断していくしかないので,

パワハラに関する裁判例を多く分析しておくことが

効果的だと考えています。

 

 

そこで,本日は,パワハラの慰謝料として250万円という,

比較的高額な慰謝料が認められた

プラネットシーアール事件を紹介します

(長崎地裁平成30年12月7日判決・労働判例1195号5頁)。

 

 

この事件では,上司の原告労働者に対する次の言動が,

原告の人格権を違法に侵害する不法行為にあたると判断されました。

 

 

上司は,原告の業務負担が前より増加する中,

逆により短時間で結果を出すように

原告にとって困難な目標達成を求め続けたり,

営業部門との板挟みになって対処に窮するような指示をし続け,

それらが実現できないと,指示に従わないとして

厳しく注意,叱責することを繰り返しました。

 

 

 

 

しまいには,叱責中の原告の目つきや態度が気に食わない

として叱責したり,過去に叱責した問題を蒸し返して叱責したり,

上司が何について叱責したいのか告げないまま叱責し,

原告が何について叱責されているのかわからないことを

更に叱責するといった,内容的にはもはや叱責のための叱責となり

業務上の指導を逸脱した執拗ないじめとなっていました。

 

 

具体的には,「何だその目つきは。文句があるのか。

言いたいことがあるなら口で言え。恨めしげににらみやがって,腹の立つ。」,

「反抗的な,もの言いたげな,口を尖らせたような顔をしとる」,

「言い訳するな,お前が悪い」,

「今までのミスを俺が明らかにすれば,お前クビぞ,脅しじゃなかぞ」,

「始末書を書くのにパソコンを書くのかお前は。

お前の始末書に会社の財産を使うのか。」,

「お前は素直なふりをしているが,素直そうなその返事も,

俺にはうそとしか思えない。うそをつくやつには仕事を任せられない」

などというものです。

 

 

理由もなく叱責したり,解雇をちらつかせたり,

仕事から排除する場合には,違法なパワハラと

認定される可能性があります。

 

 

上司のこれらのパワハラは約1年間も続き,原告は,

適応障害を発症し,最終的には精神的に不安定となり,

希死念慮にかられるまで精神的に追い詰められて

働けなくなってしまいました。

 

 

 

 

上司のパワハラの態様や,原告の被害状況,

会社のその後の対応などを考慮して,

慰謝料250万円が認められました。

 

 

さらに,この事件では,もう一つ注目される判断がされました。

 

 

原告は,上司のパワハラが原因で働けなくなったので,

会社の責めに帰すべき事由によって,労務提供ができないので,

民法536条2項により,賃金請求ができ,

原告は,労災保険から休業補償を受給していましたが,

このような給付は賃金を補填する趣旨で支給されるものではないから,

休業補償を受給したことで,被告が賃金額を減額することはできない

と判断されたのです。

 

 

解雇の事件では,解雇が無効になった場合,

民法536条2項を根拠に未払賃金を請求できますが,

他の会社で働いていた場合,平均賃金の4割ほど

減額されることがあるのですが,

労災保険の休業補償を受給していても,

未払賃金から減額されないというわけです。

 

 

この判断は,労働者にとって有利なものです。

 

 

パワハラ事件で高額な慰謝料が認められるのはどのような場合か

を検討するのに参考になりますので,紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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