現場から考えるパワハラとその予防

先日,ありがたいことに,金沢市内の中小企業から,

パワハラの研修のご依頼をいただきました。

 

 

どのような研修を行おうか検討するにあたり,

パワハラに関する最近の文献を読み込んでいるところですので,

順次アウトプットしていきます。

 

 

法律家の専門雑誌である「ジュリスト」2019年4月号(1530号)

で「パワハラ予防の課題」という特集がくまれており,

企業におけるパワハラ,スポーツにおけるパワハラ,

学校におけるパワハラについて,4人の専門家が

「現場から考えるパワハラとその予防」という座談会を開催していました。

 

 

 

 

この座談会では,パワハラとはどのようなもので,

パワハラの原因や予防について議論されています。

 

 

私は,よく,パワハラには3つのハードルがあると述べています。

 

 

1つ目は,パワハラの言動を立証できるか,

2つ目は,当該上司の言動が違法なパワハラといえるのか,

3つ目は,慰謝料の金額です。

 

 

今回の特集では,2つ目のハードルである,

そもそもどのような言動が違法なパワハラになるのか

について焦点があてられていました。

 

 

仕事に関する適切な指導や注意と

違法なパワハラとの線引をどうするのか

という実務で頭を悩ませる論点について,

座談会では議論されていました。

 

 

パワハラにはグラデーションがあるというのが興味深かったです。

 

 

 

パワハラには,刑事責任に該当するもの,

民事の損害賠償責任に該当するもの,

降格処分に該当するもの,

違法とはいえないけれども職場環境では望ましくない行為など,

様々なレベルの言動があります。

 

 

パワハラは,①優越的な地位に基づく,

②業務上,必要かつ相当な範囲を超えた言動で,

③職場環境を害することという3つの要件に

該当すれば違法となるのですが,この3つの要件が抽象的で,

白黒つけられないグレーな言動の場合に,

違法なパワハラといえるのか,微妙な判断が必要となります。

 

 

今回の座談会では,このようなグラデーションのあるパワハラについて,

違法といえるか否かを検討するにあたり,

キーワードとなる言葉がでてきました。

 

 

1つ目は,「感情的」です。

 

 

業務能力が低い部下にイライラしたり,

部下が指示どおりに動かない場合,上司はかっとなって,

感情的に,「そんな社員はいらない」,「辞めてしまえ」,

「評価に触れる」,「あなたはパート以下だ」,

「こんな仕事ぶりだったら出てこなくていいから」

という発言をしてしまいがちです。

 

 

 

 

感情的に,このような発言をしてしまうと,

違法なパワハラと認定されやすくなります。

 

 

2つ目は,「人格」です。

 

 

部下の仕事上のミスに対して,ミスの原因を明らかにして,

反省を促すような注意であれば,多少厳しい口調になっても,

直ちに違法なパワハラとは評価されないと思います。

 

 

しかし,「こんなこともできないのか,給料泥棒」などの発言をして,

部下をだめなやつと決めつけるように,部下の人格を否定したり,

誰が聞いても嫌悪感を抱くような言い方をすれば,

違法なパワハラと認定されやすくなります。

 

 

3つ目は,「関係性」です。

 

 

その人との空間に入るのがつらいし,

その人の存在を考えるだけで苦しくなるような関係性のことです。

 

 

ただ,この関係性は,全体構造の中で,役職的に上の人との間の

空気感みたいなものを立証しなければならないので,

実際に立証するのは困難です。

 

 

4つ目は,「回数」です。

 

 

たわいもないことでも,何回も繰り返されれば,人は傷つくのです。

 

 

このように,パワハラにはグラデーションがあり,

感情的,人格,関係性,回数といった切り口で分析することで,

パワハラのグラデーションの中で違法なレベルに達しているのかを

判断しやすくなると思いました。

 

 

長くなりましたので,続きは明日以降に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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