基本給の格差が不合理と認められた事件2~学校法人産業医科大学事件~

昨日のブログの続きで,基本給の格差を不合理と判断した

学校法人産業医科大学事件の福岡高裁平成30年11月29日判決

(労働判例1198号63頁)を紹介します。

 

 

臨時職員として30年以上もの長期にわたり

雇用されてきたということが,労働契約法20条の

③その他の事情にあたると判断されたので,次に,

この点を考慮して,基本給の格差が不合理となるかが検討されました。

 

 

まず,正社員には,俸給,賞与のほかに

退職手当が支給されていましたが,

臨時職員に対しては退職手当が支給されていなかったこと,

臨時職員は,人事考課制度の対象ではなく,

給与月額は毎年一律で人事院勧告に従って

引き下げや引上げが行われ,原告の基本給は,

同じ頃に採用された正社員と比較して

2分の1くらいになっていたことが考慮されました。

 

 

 

 

次に,原告と同じ頃に採用された正社員は,

当初は,原告と類似した業務に携わり,

業務に対する習熟度を上げるなどして,

採用から6年ないし10年で主任として

管理業務に携わる地位に昇格していったことが考慮されました。

 

 

以上の事情を総合考慮した上で,次のように判断されました。

 

 

30年以上の長期にわたり雇用を続け,

業務に対する習熟度を上げた原告に対し,

臨時職員であるとして人事院勧告に従った

賃金の引上げのみであって,原告と学歴が同じ

短大卒の正社員が管理業務に携わる地位である

主任に昇格する前の賃金水準すら満たさず,

現在では,同じ頃に採用された正社員との基本給の額に

約2倍の格差が生じているという労働条件の相違は,

同学歴の正社員の主任昇格前の賃金水準を下回る

3万円の限度において不合理であるとされました。

 

 

また,労働者の賃金に関する労働条件のあり方については,

基本的には,団体交渉等の労使自治に

委ねられるべき部分が大きいのですが,

臨時職員については,正社員への登用や

採用が中止されてからの期間の経過の中で退職する人がいたりして,

その数が少数になっていたことが認められ,

必ずしも,団体交渉等による労使自治により,

労働条件の改善が図られていたことができていなかったことも,

この判断の背景にはありそうです。

 

 

結果として,基本給の格差が不合理であり,

労働契約法20条違反となり,

合計113万4000円の損害賠償請求が認められました。

 

 

この事件では,本来は長期雇用を予定していなかったはずの

臨時職員が長期にわたって採用されているという雇用状態の変化と,

同学歴で長期間勤務している正社員との格差が大きすぎることから,

基本給の格差が不合理と判断されました。

 

 

 

今までの裁判例では,基本給の格差は不合理とは

認められませんでしたが,この裁判例によって,

基本給であっても,格差が不合理と判断される

余地があることがわかりました。

 

 

非正規雇用労働者にとって画期的な裁判例ですので,

紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

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