未払残業代請求事件におけるタイムカードの開示義務

未払残業代請求事件では,未払残業代を請求する労働者が,

各労働日ごとに,何時から何時まで働いたのかを,

証拠に基づいて証明しなければなりません。

 

 

そのため,私は,未払残業代事件の法律相談を受ける場合には,

労働時間を証明するための証拠としてどのようなものがあるのかを,

相談者の方に確認します。

 

 

タイムカードによって,労働時間の管理が行われているようであれば,

タイムカードに打刻された時刻によって,

労働時間が認定されることがほとんどですので,

労働者側の弁護士としては,

タイムカードをどうやって入手するかを考えます。

 

 

 

弁護士が労働者の代理人として,会社に対して,

タイムカードの開示を要求すれば,

会社側にも弁護士の代理人がついて,

タイムカードを開示してくることが多いです。

 

 

私は,これまで未払残業代を請求してきて,

タイムカードの開示を拒否されたことはありません。

 

 

しかし,労働者個人が会社に対して

タイムカードの開示を求めたとしても,

会社がタイムカードの開示に応じなかった場合,

労働者は,どうすればいいのでしょうか。

 

 

労働者が個人で会社に対して,タイムカードの開示を求めても,

会社がタイムカードの開示を拒否してくることがあると思いますので,

本日は,タイムカードの開示について解説します。

 

 

タイムカードの開示については,

医療法人大生会事件の大阪地裁平成22年7月15日判決

(労働判例1014号35頁)が参考になります。

 

 

この事件では,被告会社が何の説明もなく,

原告労働者がタイムカードを打刻できない状態にし,

原告労働者が被告会社に対して,タイムカードの開示を要求しても,

被告会社はこれに応じず,裁判になっても,

被告会社は,タイムカードを紛失したとして,

裁判が終わるまで,タイムカードを開示しませんでした

(ちなみに,会社は,労働基準法109条により,

タイムカードを3年間保管しなければなりません)。

 

 

裁判所は,会社には,労働基準法の規制を受ける労働契約の

付随義務として,信義則上,労働者にタイムカード等の

打刻を適正に行わせる義務を負っているだけではなく,

労働者からタイムカードの開示を求められた場合には,

その開示の要求が濫用にわたると認められるなど

特段の事情のない限り,保存しているタイムカード等を

開示すべき義務を負うと判断しました。

 

 

 

そして,会社が,この義務に違反して,

特段の事情なくタイムカード等の開示を拒否した場合,

その行為は違法性を有し,不法行為に該当します。

 

 

結果として,この事件では,タイムカードの開示拒否によって,

原告労働者は一定の精神的苦痛を受けたとして,

慰謝料10万円が認められました。

 

 

会社がタイムカードで労働時間を管理している場合に,

特段の事情がないかぎりタイムカードの開示を拒否することが

不法行為になるとすれば,タイムカードの開示を

間接的に強制できることになるので,画期的な判決です。

 

 

さらに,労働安全衛生法が改正されて,会社は,

労働者の労働時間を把握する義務を負うことが

法律に明文化されたので,労働時間の把握義務との関連でも,

会社は,タイムカードの開示を拒否できなくなると思います。

 

 

労働者としては,医療法人大生会事件の大阪地裁の裁判例と,

労働時間の把握義務を根拠に,会社に対して,

タイムカードの開示を要求していけばいいのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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