支店長やマネージャーになると残業代を請求できないのか?

支店長やマネージャーという役職がつくと,

残業代が支払われないという労働相談を受けることがあります。

 

 

会社は,支店長やマネージャーは,労働基準法41条2号の

「監督若しくは管理の地位にある者」に該当することを理由に,

残業代を支払わなくても合法であると主張します。

 

 

しかし,往々にして,裁判では,このような会社の主張は

認められにくく,労働者の未払残業代請求が認められることが多いです。

 

 

その理由について,コナミスポーツクラブ事件の

東京高裁平成30年11月22日判決と

東京地裁平成29年10月6日判決(労働判例1202号70頁)

を紹介しながら解説します。

 

 

まず,労働基準法41条2号の管理監督者に該当すれば,労働者は,

労働基準法に定められている労働時間の保護規定が適用されなくなり,

どれだけ残業しても,残業代を請求できなくなってしまいます。

 

 

 

なぜこのようなことになるのかについて,裁判所は,

次のように判断しています(少し長いですが引用します)。

 

 

「管理監督者については,その職務の性質や経営上の必要から,

経営者と一体的な立場において,労働時間,休憩及び休日など

に関する規制の枠を超えて活動することが要請されるような

重要な職務と責任,権限を付与され,

実際の勤務態様も労働時間などの規制になじまない立場にある一方,

他の一般の従業員に比して賃金その他の待遇面で

その地位にふさわしい優遇措置が講じられていることや,

自己の裁量で労働時間を管理することが許容されていることなどから,

労基法の労働時間などに関する規制を及ぼさなくても

その保護に欠けるところがないと考えられることによるものである。」

 

 

そのため,管理監督者に該当するかについては,

次の3つの要件に該当するかによって判断されます。

 

 

①当該労働者が実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの

重要な職務と責任,権限を付与されているか

 

 

 ②自己の裁量で労働時間を管理することが許容されているか

 

 

 ③給与などに照らし管理監督者としての

地位や職責にふさわしい待遇がなされているか

 

 

 

本件事件では,①について,支店長には,

支店で提供するサービスの内容の決定や営業時間の変更について

決定権がなく,アルバイトの採用や販売促進活動の実施などについて

本社の決裁を経る必要があることから,

経営者と一体的な立場にはないと判断されました。

 

 

②について,支店長についてもタイムカードや週報などで

労働時間が管理されており,人員不足のために,

管理業務以外のフロント業務やインストラクター業務といった

一般従業員と同じ業務をしなければならないほど多忙で,

労働時間について裁量がなかったと判断されました。

 

 

③について,支店長には,役職手当として,

月額5~6万円が支給されていましたが,

本給の幅が16~23万円であり,管理監督者として

ふさわしい待遇があったとはいえないと判断されました。

 

 

以上より,コナミスポーツの支店長は,

管理監督者ではないとして,

未払残業代請求が認められました。

 

 

上記3つの要件のうち,特に③の要件については,

給料明細を見れば,判断することが容易であり,

低い給料で働かされていたのであれば,

管理監督者ではないと判断される可能性が高いです。

 

 

そのため,支店長やマネージャーという役職についても,

給料が低かったり,以前と働き方が変わっていないような場合には,

労働基準法の管理監督者には該当せず,

未払残業代を請求できる可能性があるのです。

 

 

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