パワハラの分水嶺

今年の通常国会において,労働施策総合推進法が改正されて,

パワハラの定義が,次のように,法律に明記されました。

 

 

職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって,

業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

その雇用する労働者の就業環境が害されること

 

 

もっとも,「業務上必要かつ相当な範囲」という定義が

抽象的であるため,上司による部下の指導が

違法なパワハラに該当するかについては,

具体的な諸事情を考慮して,ケースバイケースで

判断していくしかないのです。

 

 

 

本日は,違法なパワハラか否かについて,

興味深い判断がされた公益財団法人後藤報恩会ほか事件の

名古屋高裁平成30年9月13日判決

(労働判例1202号138頁)を紹介します。

 

 

この事件は,美術館の学芸員が恩師のお通夜と葬儀に

参列しようとして,美術館に有給休暇の申請をしたものの,

無断欠勤とされて,上司から,次のような言動をされたことが

違法なパワハラに該当するかが争われました。

 

 

すなわち,上司は,原告の学芸員に対して,

「非常識」,「信頼関係ゼロ」,「ここの職員としてふさわしくない」

などと非難し,原告の性格では美術館で任せられる仕事はなく,

性格を変えられないのであれば,

辞表を書いて退職することを求めることを伝えました。

 

 

この際,上司には,声を荒げたり,

高圧的な態度はなかったようです。

 

 

一審の名古屋地裁は,上司の言動は,

部下に対する仕事上の注意や指導として,

社会通念上許容しうる限度を超えた違法なものとはいえないとして,

原告の損害賠償請求を否定しました。

 

 

言葉はきつくても,指導の範囲内と判断されたのです。

 

 

他方,控訴審の名古屋高裁は,採用間もない原告に対して,

一方的に非があると決めつけ,原告の性格や感覚を非難して,

職場から排除しようとするものであり,

社会的相当性を逸脱する違法な退職勧奨であるとして,

慰謝料60万円の損害賠償請求が認められました。

 

 

 

このように,一審と控訴審とで判断が分かれました。

 

 

一審は,上司の言動を個々にとらえて,

違法なパワハラではないとしましたが,

控訴審は,半月ほどの期間に集中して,

パワハラな言動が複数回行われた一連の経過を重視して,

違法な退職勧奨があったとしました。

 

 

微妙な判断ではありますが,パワハラの期間や,

連続性,一連のものといえるかといった事情も,

違法なパワハラといえるかの考慮要素になります。

 

 

やはり,違法なパワハラといえるか否かは,

様々な事情を総合考慮して判断されるため,

どのような結論になるのか見通しが立てにくく,

難しい事件類型の一つであると思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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