専門的な職種の労働者は職種限定合意で配置転換命令を争える

昨日,「ドクターX 外科医・大門未知子」

のスペシャルドラマが放映されていました。

 

 

「わたし,失敗しないので」という決めゼリフが

有名な天才外科医のドラマは,人気があるためか,

何年にもわけて放映されています。

 

 

さて,大門未知子は,フリーランスなので,病院との間で,

どのような契約を締結しているのかよくわかりませんが,

通常の場合,医師は,病院との間で労働契約を締結し,

病院から賃金の支払を受けて,

患者の治療という労務の提供を行います。

 

 

医師も病院と労働契約を締結するので,労働契約に基づき,

病院から配置転換を命令されることがあります。

 

 

もっとも,医師の専門性から,

病院の配置転換命令が有効となるのかが

問題となることがあります。

 

 

本日は,外科医に対する配置転換・診療禁止命令の有効性が争われた,

地方独立行政法人岡山市立総合医療センター事件の

広島高裁岡山支部平成31年1月10日決定

(労働判例1201号5頁)を紹介します。

 

 

この事件では,消化器外科部長であった外科医に対する,

がん治療サポートセンター長に任命する配置転換命令と,

外科の一切の診療に関与することを禁止する命令が

有効なのかが争われました。

 

 

配置転換とは,同一企業内における労働者の

職種,職務内容,勤務場所のいずれかを

長期間にわたって変更する企業内人事異動の一つです。

 

 

職種,職務内容,勤務場所は,いずれも労働条件なので,

会社と労働者との労働契約において,

これらを限定する合意がされている場合には,

配置転換命令は,限定された範囲内に制約されます。

 

 

職種を限定した合意をしていた場合,会社は,労働者に対して,

限定している職種以外の職種への配置転換命令をだせないのです。

 

 

この職種限定合意については,専門業務をしている

労働者には認められやすい傾向があります。

 

 

本件事件では,外科医と病院との間に,

職種を外科医に限定する明示の合意はありませんでした。

 

 

しかし,外科医は,極めて専門的で

高度の技能・技術・資格を要するものであり,

長年にわたり特定の職務に従事することが必要で,

熟練度や経験が仕事を進めていくうえで重要になります。

 

 

 

そのため,技能・技術・資格を維持するために,

外科医としての臨床に従事することは必要不可欠であり,

その意に反して外科医としての臨床に従事しないという

労務形態は想定できないとして,

黙示の職種限定合意があったとしました。

 

 

そして,医師の同意なく,専門とする診療科での診療を禁止することは,

医師としての高度の技能・技術・資格を一方的に奪うことになるから,

本件の配置転換命令と診療禁止命令は無効と判断されました。

 

 

さらに,本件事件では,民事保全という裁判手続がとられており,

民事保全では,保全の必要性という要件が必要になります。

 

 

本件の配置転換命令と診療禁止命令によって,

外科医としての技能・技術の質を低下させられ,

専門医の資格を失うことにより,

外科医としての専門性が失われるという不利益が大きいことから,

保全の必要性が認められました。

 

 

このように,専門性のある仕事をしている労働者の場合,

黙示の職種限定合意があったとして,

配置転換命令を争う可能性があるのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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