部下から上司に対する逆パワハラ

1 産業医科大学の逆パワハラ事件

 

 

産業医科大学の医学部の教授が,

部下に大勢の医局員の前で謝罪するように強要されたり,

病院の外で誹謗中傷されたりしたとして,

部下及び大学に対して,損害賠償請求の訴訟を提起しました。

 

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191028-00010000-nishinpc-soci

 

 

部下の上司に対する,いわゆる逆パワハラ

ということで注目されています。

 

 

本日は,逆パワハラについて,検討します。

 

 

2 パワハラの定義

 

 

まず,今年の通常国会で成立した改正労働施策総合推進法において

定義されたパワハラとは,

①優越的な関係を背景とした言動であって,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより,

③労働者の就業環境が害されるもの,

というものです。

 

 

 

通常,パワハラは,上司から部下に対して行なわれることが多く,

その場合には,①優越的な関係を背景とした言動という要件を満たします。

 

 

しかし,部下から上司に対するパワハラの場合,通常,

上司は,部下に対して指導監督することができる立場にあるので,

①優越的な関係を背景とした言動という要件を

満たさないのではないかが問題となります。

 

 

ここで,部下から上司に対するパワハラが問題になった

労災の裁判例を紹介します。

 

 

3 逆パワハラの裁判例

 

 

1つは,国・渋谷労基署長(小田急レストランシステム)事件の

東京地裁平成21年5月20日判決(労働判例990号119頁)です。

 

 

この事件では,部下が上司について,売上を着服している,

金庫から金銭を盗んだ,女性社員にセクハラをしている,

などが記載されている中傷ビラを配布し,

上司がその対応におわれ,店長の職を解任されました。

 

 

その後,この上司はうつ病を発症し,自殺しました。

 

 

裁判では,部下とのトラブルが他の事情とあいまって,

強い心理的負荷が生じていたとして,労災と認められました。

 

 

もう1つは,京都地裁平成27年12月18日判決です。

 

 

この事件では,部下が上司のことを,

「給与が高いくせに仕事ができない」などと言い,

部下が,病気で字がうまく書けない上司に対して,

「日本語わかっていますか」という辛辣な発言をしました。

 

 

その後,この上司は,うつ病に罹患しました。

 

 

裁判では,部下とのトラブルがあったとして,

心理的負荷の強度は中でしたが,総合評価で強となり,

労災と認められました。

 

 

部下から上司の逆パワハラの場合,

①上司の業務上の経験や適性の有無,

②上司の部下に対する監督権限の有無,

③部下の不適切な行動を容認するような状況,

といった要素をもとに,

部下の上司に対する優越的な関係を背景とした言動といえるかが

検討されます。

 

 

 

4 職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案の問題点

 

 

なお,先日公表された「職場におけるパワーハラスメントに関して

雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」において,

優越的な関係を背景とした言動については,

当該言動を受ける労働者が行為者に対して

抵抗または拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として

行なわれるものとされました。

 

 

その具体例として,次のことが例示されました。

 

 

同僚または部下による言動で,当該言動を行う者が

業務上必要な知識や豊富な経験を有しており,

当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの

 

 

同僚または部下からの集団による行為で,

これに抵抗または拒絶することが困難であるもの

 

 

部下から上司に対する逆パワハラも,

優越的な関係を背景とした言動に含まれることが明らかとなりました。

 

 

しかし,抵抗または拒絶することができない蓋然性が高い関係

という解釈では,パワハラに該当する言動が不当に狭められてしまい,

パワハラの被害救済に支障が生じるおそれがあると考えます。

 

 

そのため,抵抗または拒絶することができない蓋然性が高い関係

という解釈を,もっと被害者救済に有利に改善していく必要があります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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