過労死認定基準の見直し

1 約20年ぶりの見直し

 

 

厚生労働省が,過労死の労災認定基準である

脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準

を見直すことに決めたそうです。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191031/k10012157801000.html

 

 

この過労死認定基準が制定されたのが,平成13年12月ですので,

約20年ぶりに見直されることになります。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11.pdf#search=%27%E9%81%8E%E5%8A%B4%E6%AD%BB%E8%AA%8D%E5%AE%9A%E5%9F%BA%E6%BA%96%27

 

 

2 現行の過労死認定基準

 

 

現行の過労死認定基準では,

①労災認定の対象となる脳・心臓疾患を発症したこと,

②対象疾病の発症前に,異常な出来事,短期間の過重業務,長期間の過重業務

のいずれかが認められること,という要件を満たせば,労災と認定されます。

 

 

 

②の要件で,実務上最も多いのが,長期間の過重業務です。

 

 

長期間の過重業務とは,具体的には,

発症前の1ヶ月間におおむね月100時間を超える時間外労働,または,

発症前の2ヶ月間から6ヶ月間にわたっておおむね月80時間を超える時間外労働,

のいずれかをしていた実態が認められるかが重要になります。

 

 

これは,労働時間が長くなれば,睡眠時間がけずられてしまい,

疲労が蓄積して,脳や心臓の血管にダメージが積み重なって,

対象疾病を発症してしまうことから,

時間外労働の長さが過労死と認定されるかの重要なポイントになるのです。

 

 

もっとも,過労死の裁判例では,

1ヶ月の時間外労働が80時間よりも短くても,

他の要素を考慮して,労災と判断したものもあります。

 

 

そのため,過労死の労災認定基準の見直しにあたっては,

時間外労働の長さを短縮する方向ですすめていってもらいたいです。

 

 

3 移動時間の問題

 

 

また,現在の過労死の労災認定の実務では,

移動時間が労働時間となるかが問題となることがあります。

 

 

例えば,出張先へ自分で自動車を長距離運転して移動した場合,

その運転している時間が,労働時間ではないとされるケースがあります。

 

 

単に,公共交通機関を利用して移動するのであれば,

実際の作業をしておらず,会社からの拘束も低いので,

労働時間ではないとされてもやむを得ませんが,

仕事の移動のために自分で自動車を運転すれば,

当然疲れますし,労働時間とされるべきです。

 

 

4 持ち帰り残業

 

この他にも,最近は,通信機器が発達しているので,

自宅にノートパソコンやタブレットを持ち帰って,

自宅で仕事をすることも多くなっています。

 

 

この持ち帰り残業ですが,会社ではなく自宅という点において

会社の指揮命令下に置かれておらず,

持ち帰り残業による成果物が存在するなど,

持ち帰り残業が会社の業務命令に基づいて行なわれたと認められる事情がない限り,

労働時間と認定されない可能性があります。

 

 

 

業務時間外に仕事のメールを受け取る数が多いと,

仕事の心配ごとを考えてしまって,

夜中に目がさめてしまう中途覚醒が増えて,

睡眠の質が低下するようです。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191008/k10012118281000.html

 

 

そのため,持ち帰り残業も,自宅で休息することができず,

働いているとして,労働時間とする必要があると考えます。

 

 

今回の過労死認定基準の見直しにあたっては,

移動時間や持ち帰り残業についても,

労働時間とするようにしてもらいたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

電話番号076-221-4111
お問合せはこちら
0 返信

返信を残す

Want to join the discussion?
Feel free to contribute!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。