トヨタ自動車のパワハラ自殺からパワハラと労災申請を検討する

1 トヨタ自動車のパワハラ自殺事件

 

 

11月20日の過労死シンポジウムが

石川県で開催された日の朝刊で,

トヨタ自動車の労働者が上司のパワハラを受けて,

自殺したことが労災と認定されたことが報道されました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASMCM33X0MCMPTIL006.html

 

 

報道によりますと,自殺した労働者は,上司から,

「バカ,アホ」,「死んだ方がいい」などの言葉の暴力を受けて,

適応障害を発症して,自殺したたようです。

 

 

 

日本を代表する企業において,

パワハラによる労働者の自殺が発生したことは,

社会に大きな衝撃を与えました。

 

 

あのトヨタ自動車でさえ,労働者が自殺してしまうほどの

パワハラが行われていたのですから,他の日本の企業においても,

パワハラの被害が生じているのが容易に想像できます。

 

 

さらに,法律でパワハラ防止措置義務が企業に課されることになり,

パワハラの指針が議論されている現状において,

トヨタ自動車のパワハラが明るみになっただけに,

衝撃は大きかったです。

 

 

 

本日は,トヨタ自動車の事件をもとに,

パワハラと労災申請について解説します。

 

 

2 精神障害の労災認定基準

 

 

パワハラを理由に労災申請する場合,労働者が受けたパワハラが,

「心理的負荷による精神障害の認定基準」という労災の基準の別表1

「業務による心理的負荷評価表」に記載されている具体的出来事に該当し,

その心理的負荷が強と判断されなければなりません。

 

 

パワハラで労災を申請する場合,具体的出来事としては,

「(ひどい)嫌がらせ,いじめまたは暴行を受けた」,

「上司とのトラブルがあった」にあてはまるかを検討します。

 

 

「(ひどい)嫌がらせ,いじめまたは暴行を受けた」の類型では,

部下に対する上司の言動が,業務指導の範囲を逸脱しており,

その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ,

かつ,これが執拗に行われた」場合に心理的負荷が強となります。

 

 

①業務指導の範囲の逸脱,

②人格や人間性を否定する言動,

③執拗に行われる,

という3つの要件を満たす必要があります。

 

 

とくに,③執拗に行われる,という要件があるため,

1回きりの人格を否定するひどい暴言だけでは,

労災と認定されないわけです。

 

 

 

次に,「上司とのトラブルがあった」の類型では,

業務をめぐる方針等において,周囲からも客観的に認識されるような

大きな対立が上司との間に生じ,その後の業務に大きな支障を来した

場合に心理的負荷が強となります。

 

 

周囲から客観的に認識されて,業務に支障を来す必要があるので,

これを証明していくのは至難の業です。

 

 

このように,パワハラで労災の認定を受けるのは

ハードルが高いのが現状です。

 

 

3 録音や周囲の人間の証言が重要

 

 

トヨタ自動車のパワハラ自殺事件では,

上司が暴言をはいたことを認めているようですが,

暴言の録音や同僚の証言があったから,

上司は暴言をはいたことを認めたのかもしれません。

 

 

言葉による暴力は,録音や周囲の人間の証言がないと,

証明が難しいのです。

 

 

また,トヨタ自動車の事件では,

休職後にいったん復職して自殺しているので,

休職前のパワハラと復職後の自殺の因果関係を認めた

点においても画期的です。

 

 

以上解説してきたように,パワハラの労災の認定基準が厳しいので,

この労災認定基準を,パワハラの被害者に有利に改正する必要があります。

 

 

ちょうど,厚生労働省は,精神障害の労災認定基準に

パワハラについての項目を加える方向で改正をすすめるようですので,

労働者に有利に改正されることを期待したいです。

 

 

https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019111602000117.html

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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