内部通報を理由とした配転命令が不利益取扱として無効となった事例

1 配転命令の根拠規定はあるか

 

 

先日,転勤命令に対する対処の仕方をブログに記載しました。

 

 

転勤命令は,法律上,配転命令といいますので,本日は,

配転命令が無効であると主張していくポイントについて,解説します。

 

 

 

まずは,会社に,労働契約上の配転命令の

根拠があるのかをチェックします。

 

 

通常の会社であれば,就業規則に,

「業務上の必要がある場合,配置転換を命じることがある」

と規定されていることがほとんどであり,

このような概括的な規定があれば,

労働契約上の配転命令の根拠があることになります。

 

 

逆に言えば,このような就業規則の規定がなく,

労働契約書にも配転命令についての規定がないのであれば,

会社は,配転命令をすることができないので,

配転命令は無効になります。

 

 

次に,就業規則に配転命令の根拠規定があったとしても,

労働契約で,職種や勤務地が限定されている場合には,

限定されている職種や勤務地を変更する配転命令は無効になります。

 

 

2 配転命令が権利の濫用に該当するか

 

 

そして,職種や勤務地の限定がない場合には,

配転命令が権利の濫用に該当しないかを検討します。

 

 

配転命令が権利の濫用に該当するかについては,

次の判断基準をもとに検討します。

 

 

①配転命令について,業務上の必要性があるか

 

 

 ②配転命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものか

 

 

 ③労働者に対して通常甘受すべき程度を

著しく超える不利益を負わせるものか

 

 

3 配転命令の不当な動機・目的が認められた裁判例

 

ここで,②配転命令が不当な動機・目的をもってされたと

判断されたオリンパス事件の東京高裁平成23年8月31日判決

を紹介します(労働判例1035号42頁)。

 

 

 

この事件では,取引先の従業員を引き抜くことが

取引先の信頼を失墜させることにつながると考えた原告労働者が,

取引先の従業員の引き抜きの件を,

会社のコンプライアンス室に内部通報しました。

 

 

すると,コンプライアンス室の担当者は,守秘義務に違反して,

原告労働者の内部通報のことを,関係者に漏らしてしまいました。

 

 

その結果,会社の関係者は,引き抜きが阻止されたのは,

原告の言動に原因があると考えて,会社は,

原告の労働者に対して,配転命令を下しました。

 

 

そこで,原告の労働者は,配転命令が無効である

として訴訟を提起したのです。

 

 

裁判所は,本件配転命令は,会社関係者が,

取引先の従業員の引き抜きができなかったのは,

原告労働者の言動が一因となっており,

原告の内部通報に反感を抱いて,

本来の業務上の必要性とは無関係にしたもので,

その動機において,不当であり,

内部通報による不利益取扱を禁止した運用規定にも違反して,

無効と判断しました。

 

 

ようするに,内部通報に対する制裁という不当な動機・目的のために,

本件配転命令をしたとして,無効になったのです。

 

 

会社の不当な動機・目的を立証するのは,なかなか困難なのですが,

内部通報の秘密が守られなかったという特殊事情もあり,

不当な動機・目的の立証に成功したのかもしれません。

 

 

配転命令について,会社の不当な動機・目的を認めた裁判例として,

紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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