新型コロナウイルス感染拡大によるマスク増産に残業規制は及ぶのか

1 マスク増産による残業

 

 

厚生労働省は,新型コロナウイルスの感染拡大で

マスクや消毒液などの緊急増産におわれる企業があることを念頭に,

残業時間規制の例外とする場合があるとして,労働局に通知しました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN3K5T5MN3KULFA00V.html

 

 

一方で,労働組合の相談には,マスクメーカーの工場で

勤務している労働者から,2月から休日がなく,泊まりも多く,

過労死してしまうという悲痛な相談が寄せられているようです。

 

 

 

ちょうど,本日2020年4月1日から,中小企業にも

残業時間の罰則付き上限規制が施行されますので,

マスクの増産などで残業がどこまで許容されるかについて解説します。

 

 

2 36協定と残業時間の罰則付き上限規制

 

 

まず,会社が労働者に残業を命じるためには,36協定を締結して,

労働基準監督署に届け出なければなりません。

 

 

この36協定に,何時間残業させることができるのかを

規定しなければなりません。

 

 

この残業時間の限度時間は,原則として,

1ヶ月45時間,1年間で360時間となっています。

 

 

次に,この限度時間の例外として,当該事業場における

通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い

臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合には,

次の条件を満たす36協定の特別条項を定めることで,

1ヶ月45時間,1年間で360時間を超えて

残業させることが可能となります(労働基準法36条5項)。

 

 

①1ヶ月について,時間外労働と休日労働の合計労働時間数を

100時間未満の範囲で定める。

 

 

②1年間について,時間外労働の合計時間数を,

720時間を超えない範囲で定める。

 

 

③特別条項により1ヶ月45時間を超えて

時間外労働をさせることができる月数を,年6ヶ月以内で定める。

 

 

マスク工場のマスク増産による残業ですが,

労働基準法36条5項の事由に該当すると考えられるので,

36協定で上記の特別条項を定めれば,

1ヶ月45時間以上100時間未満で残業させることが可能となります。

 

 

もっとも,36協定で特別条項を定めたとしても,次の場合には,

労働基準法36条6項に違反したとして,会社は,

懲役6月以下または30万円以下の罰金の刑事罰の対象となります。

 

 

①1ヶ月について,時間外労働及び休日労働の合計時間が

100時間以上となった場合

 

 

 ②直近2ヶ月から6ヶ月の各期間における時間外労働及び休日労働の

合計時間の平均が1ヶ月あたり80時間を超えた場合

 

 

そのため,マスク工場のマスク増産による残業は,基本的には,

1ヶ月100時間以上させることはできません。

 

 

3 労働基準法33条による災害等の場合の残業

 

 

もう一つ,これらの例外として,

労働基準法33条による残業があります。

 

 

災害その他避けることのできない事由によって,

臨時の必要がある場合においては,会社は,

労働基準監督署の許可を受けて,

その必要の限度において残業させることができます。

 

 

 

もっとも,労働基準法33条の規定は,これまで述べてきた

36協定では対応できないような不可抗力の場合に限って認められます。

 

 

そのため,単なる業務の繁忙その他これに準じる経営上の必要の場合

には,労働基準法33条は適用できません。

 

 

新型コロナウイルス感染拡大によるマスク増産については,

36協定の範囲の残業で対応すべきものであり,

労働基準法33条が適用されるされるべきではないと考えます。

 

 

マスク増産も大切ですが,マスク工場で残業する労働者の

健康を守ることも大切ですので,

36協定の範囲内での残業しか認めらないと考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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