復職時の労働条件の引下げを拒否しても不就労期間の未払賃金が認められることがあります

1 方便的解雇の撤回の問題

 

 

労働者が解雇を争う場合,解雇が無効であるとして,

労働者としての地位があることの確認の請求と,

解雇期間中の未払賃金の請求をすることがほとんどです。

 

 

労働者のこの請求が認められるためには,労働者に,

解雇された会社で就労する意思が認められる必要があります。

 

 

そこで,解雇された労働者は,解雇した会社に対して,

解雇は無効なので,働かせるように求めていきます。

 

 

本音では解雇された会社で働きたいと考える労働者は少ないのですが,

建前として,働かせるように求めるのです。

 

 

 

通常の会社であれば,解雇は有効なので,

戻ってくるなと主張してきます。

 

 

こういう会社であれば,労働者側弁護士としては争いやすいです。

 

 

ただ,中には嫌らしい会社もあり,解雇を撤回するので,

戻ってくるように主張してくる会社もあります。

 

 

解雇が無効になるかもしれないので,

とりあえず解雇を撤回して,

解雇した労働者を会社に戻して,

戦略的にパワハラをして自己都合退職に追い込もうとするのです。

 

 

これを方便的解雇撤回といいます。

 

 

方便的解雇撤回については,労働者側弁護士は争いにくくなので,

どのように対処すべきかについて頭を悩ませます。

 

 

本日は,方便的解雇に対処するにあたり,

参考になる裁判例を見つけたので,紹介します。

 

 

2 休職から復職するときの労働条件引下げを拒否して未払賃金請求が認めれた事例

 

 

一心屋事件の東京地裁平成30年7月27日判決

(労働判例1213号72頁)です。

 

 

この事件は,解雇ではないのですが,

労災事故にあい,休職していた原告の労働者が,

職場復帰する際に,会社から,従前の労働条件から

不利益に変更する内容の労働条件の提示を受けて,

それを拒んだ際に,従前の労働条件をもとに

未払賃金の請求ができるかが争われました。

 

 

被告の会社は,休職から復職するにあたり,

原告の労働者に対して,管理職から平社員とするので,

これまで支給していた様々な手当を支給しないようになるので,

概ね9万円の賃金を減額することを復職の条件として提示しました。

 

 

 

これに対して,原告の労働者は,

被告の会社の復職条件には応じず,

休職前の労働条件での復職を希望しました。

 

 

裁判所は,被告の会社の提案は,

人事権行使の裁量の範囲に留まらない賃金減額を含むもので,

原告の労働者の同意なく一方的に決定できないとしました。

 

 

そして,被告の会社は,

労働条件の不利益変更に関する同意書に署名しない限り,

原告の労働者の就労を受け入れない

との態度を示していたものと評価できるので,

被告の会社には,原告の不就労について,

責めに帰すべき事由があるとして,

原告の労働者の休職前の賃金の金額での

未払賃金の請求が認められました。

 

 

方便的解雇の撤回の場合,会社は,復職の条件として,

労働条件を引下げてくることがありますので,そのような場合には,

会社に責めに帰すべき事由があるとして,復職を拒否しても,

解雇前の賃金の金額での未払賃金の請求が認められることがあるのです。

 

 

実務で問題となる方便的解雇の撤回について,

対応方法を考えるに際して参考になる裁判例でするので,紹介しました。

 

 

新型コロナウイルスの感染が拡大してきたので,今後,

解雇の相談が増えるかもしれないので,参考になると思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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