懲戒処分の争い方と懲戒処分の公表が名誉毀損になる場合

1 懲戒処分の争い方

 

 

労働事件では、懲戒処分についての相談はけっこう多いです。

 

 

労働者からすると、懲戒処分に納得がいかなかったり、

会社からすると、どのような事実をもとに

どの程度の重さの懲戒処分にすべきかで悩むことがあります。

 

 

 

特に、その懲戒処分が懲戒解雇となれば、

労働者が納得する可能性が減り、

裁判に発展することも多々あります。

 

 

労働者が懲戒処分をされた時、どうすればいいのでしょうか。

 

 

結論としては、労働者は、懲戒処分に該当する行為をしたのかどうか、

また、懲戒処分は重すぎないか、を検討することになります。

 

 

懲戒処分について、興味深い裁判例がありましたので、紹介します。

 

 

ロピア事件の横浜地裁令和元年10月10日判決です

(労働判例1216号5頁)。

 

 

この事件は、スーパーマーケットで働いていた労働者が、

店の商品をレジで精算することなく店外へ持ち帰ったことを理由に

懲戒解雇されてしまい、会社に対して、

懲戒解雇の無効を主張しました。

 

 

被告会社は、故意の窃盗であると主張しましたが、

原告の労働者が他の従業員がいる中で、

人目をはばかることなく、商品を持ち出し、

知人に送る予定であると説明していることから、

原告労働者の持ち帰り行為については、

故意の窃盗とはいえないと判断されました。

 

 

また、被告会社は、従業員が店内で買い物をする際の

ルールに違反したと主張しましたが、原告労働者は、

買い物ルールに一度だけ違反しただけであり、

自らの非を認めて謝罪し、持ち出した商品の価格を弁償したので、

被告会社に与えた実損害はなく、

一度の違反行為が懲戒解雇に相当するとはいえないと判断されました。

 

 

 

そのため、原告労働者の行為は、就業規則に記載された

懲戒事由に該当するか疑問があり、比較的軽微な違反行為に対して、

不相当に重い処分がなされたとして、懲戒解雇は無効と判断されました。

 

 

労働者に問題行動があったとしても、

その行為が本当に就業規則に記載されている

懲戒事由に該当するのかをよく吟味すると、

懲戒事由に該当しないと言える場合があるのです。

 

 

 また、労働者の問題行動が懲戒事由に該当するにしても、

不相当に重い懲戒処分がなされた場合には、

懲戒処分は無効になります。

 

 

2 懲戒処分の公表と名誉毀損

 

もう一つ、この事件では、懲戒処分の会社における公表が

名誉毀損に当たると判断されました。

 

 

被告会社は、原告労働者について、氏名を明らかにした上で、

原告労働者が窃盗をしたこと、計画性が高く、

情状酌量の余地がないため、懲戒解雇したことを記載した文書が、

会社内で2週間ほど掲示されました。

 

 

この掲示については、原告労働者が故意の窃盗行為をしたと

言えないのにもかかわらず、故意の窃盗行為に及んだことを

広く公表されて、原告労働者の社会的評価が低下させられたとして、

名誉毀損が認められました。

 

 

この公表については、原告労働者の氏名を明記したこと、

誤った事実が記載されたことがポイントになったと思います。

 

 

会社としては、懲戒処分について、再発防止のために、

会社内で公表することは、違法ではないのですが、

氏名を公表しないことや、事実を正確に端的に記載する

といった配慮が求められるのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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