100回以上にわたる旅費の不正受給を理由とする懲戒解雇が有効とされた事例

1 懲戒処分の事例を検討する重要性

 

 

私は、労働事件の法律相談を受けることがよくあり、

労働事件の法律相談の中には、懲戒処分に関する相談も多いです。

 

 

懲戒処分が有効か無効かについては、

ケースバイケースで検討するしかなく、

判断に迷うことがよくあります。

 

 

 

1審と2審で結論がひっくり返るという裁判も、よくあります。

 

 

懲戒処分について適切な判断をするためには、

多くの裁判例を検討して、どのような事情があれば、

どのように判断されるのか、

という実践知を身につけるのが効果的であると考えます。

 

 

事例を集めておいて、実際の法律相談の場でアウトプットするのです。

 

 

2 旅費の不正受給で懲戒解雇された事件

 

 

懲戒処分の事案では、実際の事例を学ぶことが重要になりますので、

本日は、日本郵便(北海道支社・本訴)事件の

札幌地裁令和2年1月23日判決

(労働判例1217号32頁)を検討します。

 

 

この事件では、北海道支社広域インストラクター

という役職であった原告が、以下の不祥事をしたとして、

懲戒解雇されました。

 

 

①社用車で出張先に赴きながら、

公共交通機関を利用したものと虚偽の旅費請求書を提出して

194万9014円(うち不正受給は52万1400円)を受給した。

 

 

②私的に利用するためのクオカード分が上乗せされた

宿泊費を請求して実費を上回る宿泊費の精算を受けて、

クオカード2万1000円分を不正に受給した。

 

 

 

この原告の行為については、故意に旅行手段や宿泊料金を偽り、

これが容易に判明し得ないようになっている点が悪質性が高く、

約1年6ヶ月に100回にわたって繰り返し行われていて、

常習性があり、不正受給の額が50万円を超えていて、

看過できない規模に及んでいると判断されました。

 

 

行為の手段の悪質性、不正行為の期間と回数、

会社の被害金額が考慮されました。

 

 

他方で、原告は、不正受給した52万1400円を返納していること、

過去に懲戒処分歴がないこと、極めて優秀な業務実績をあげてきたこと、

といった有利な情状がありました。

 

 

労働者側からすると、このように有利な情状があるのだから、

いきなり懲戒解雇するのは、処分として重すぎると主張します。

 

 

実際に懲戒解雇の事件では、処分が重すぎるとして、

懲戒解雇が無効になることは、よくあります。

 

 

しかし、札幌地裁は、原告が北海道支社広域インストラクター

という役職であり、他の職員を指導する立場にあり、

職員に範を示すべきであるので、

原告が主張している有利な情状を重く見て、

処分を軽減することは相当ではないと判断しました。

 

 

原告の立場がマイナスに評価されたのです。

 

 

事実関係をみていると、懲戒解雇が有効にも無効にもなりうる、

判断に迷うケースなのですが、最後は、

原告の不祥事が会社の金銭をめぐる不正であることから、

労働者にとって厳しい判断となったと考えられます。

 

 

会社の金銭を不正に受給する行為については、裁判所は、

厳しい判断をする傾向にあるので、この点が、

結論に影響を与えたのではないかと考えます。

 

 

労働者としては、決して、

会社の金銭を不正に受給しないようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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