業務命令違反による解雇の有効性

1 解雇の効力はケースバイケースで判断するしかない

 

 

解雇を争う事件では、解雇が有効になるか無効になるかの

判断の見通しがたてにくいことがあります。

 

 

解雇は、労働契約法16条で、客観的合理的な理由を欠き、

社会通念上相当であると認められない場合には、

無効となると規定されています。

 

 

この要件が抽象的であり、

どのような場合に客観的合理的な理由があると言えるのか、

どのような場合に社会通念上相当であると言えるのか、

についてケースバイケースで判断していくしかないので、

解雇が有効か無効かの見通しがたてにくいのです。

 

 

 

解雇事件で見通しをたてるためには、

具体的な事件で裁判所はどのような判断をしたのかを

検討するのが効果的です。

 

 

2 業務命令違反による解雇の事件

 

そこで、本日は、業務命令違反による解雇が争われた、

東芝総合人材開発事件の東京高裁令和元年10月2日判決

(労働判例1219号21頁)を検討します。

 

 

この事件では、原告が、会社内部における自分の意見や不満を、

外部の派遣元関係者に対して、ぶちまける内容のメールを

送信したことについて、会社が、原告に対して、

反省文の作成を指示し、研修業務から部品の仕訳業務をするように

指示したものの、原告は会社の業務命令に従いませんでした。

 

 

原告が会社の業務命令に従わないでいたところ、会社から、

譴責の懲戒処分と、出勤停止1日の懲戒処分を受けたのですが、

それでも、原告は、会社の業務命令に従わなかったために、

解雇されました。

 

 

原告としては、懲罰目的またはいじめ・嫌がらせ目的の業務指示に

従わなかっただけであると主張して、解雇を争いました。

 

 

業務命令違反の解雇の場合、

まず業務命令の効力が判断され、

業務命令が有効とされた場合でも、

労働者に業務命令に服しないことにつき

やむを得ない事由があるかどうかが審査されます。

 

 

 そして、労働者に対して、注意・指導や懲戒処分を行っても

勤務態度を改めず、反抗的姿勢を取り続けるなど、

業務命令拒否が固執的・反復継続的で改善の見込みがなく、

会社において、労働契約の継続を期待しがたい事情が認められて初めて、

解雇の有効性が認められるのです。

 

 

 

まず,会社の業務命令が有効か無効かについて、裁判所は、

原告は、外部に問題メールを送信して、会社の信用を揺るがした上に、

反省文を作成せずに、会社を批判し続けたことから、

元の業務に戻さずに、代わりに必要な業務指示をし、

部品の仕訳業務は、精神的苦痛を生じさせない相当なものであることから、

業務命令は有効と判断されました。

 

 

次に、原告は、1年以上も業務命令に従っていないので、

会社における企業秩序が乱されており、

会社は、解雇の前に譴責と出勤停止の2回の懲戒処分をして

解雇回避努力を尽くしていることから、

有効な業務命令に従わないことを理由になされた

解雇は有効と判断されました。

 

 

業務命令が、原告を退職に追い込むことを目的としたものとは

判断されなかったので、1年以上も業務命令違反をしたなら、

解雇が有効になるのはやむを得ないことです。

 

 

また、解雇の前に軽微な懲戒処分がなされて、

労働者の改善を求めていることも、

解雇を有効にする方向にはたらきました。

 

 

解雇の効力を検討する上で参考になる裁判例として紹介しました。

 

 

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