仕事中に犯罪に巻き込まれたら労災の認定が受けられるのか

報道によりますと,京都アニメーションの放火事件において,

京都労働局が労災の認定に前向きであることが伝えられています。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASM7Z4F1SM7ZPTIL00W.html

 

 

仕事中に犯罪に巻き込まれてしまった場合,

通常,犯罪行為の加害者は,財産を持っていないことが多く,

加害者から損害賠償を回収することは困難なので,被害者は,

労災保険から補償を受けられないのかを検討することになります。

 

 

とはいえ,仕事中に犯罪に巻き込まれたからといって,

必ずしも,労災と認定されるとは限らないのです。

 

 

本日は,仕事中に犯罪に巻き込まれた場合の労災について解説します。

 

 

まず,労災保険の給付を受けるためには,

仕事が原因で労働者が負傷したことが要件となります。

 

 

 

この仕事が原因で労働者が負傷したといえるためには,

仕事と負傷との間に相当因果関係があることであり,

もう少し具体的には,労働災害の発生が業務に内在する危険が

現実化したことによるものと認められることが必要になります。

 

 

これを業務起因性といいます。

 

 

そこで,仕事中に犯罪に巻き込まれて負傷したことが,

業務に内在する危険が現実化したことによるものと

認められるかが問題となるのです。

 

 

この問題で,注目すべき裁判例として,

国・尼崎労基署長(園田競馬場)事件の

大阪高裁平成24年12月25日判決

(労働判例1079号98頁)があります。

 

 

この事件では,競馬場で馬券を購入する客にマークシートの

記入方法などを案内する女性担当員(通称マークレディといいます)が,

ストーカーと化した同じ競馬場に勤務する男性警備員に

勤務中に刺殺されたことについて,

業務起因性があるのかが問題となりました。

 

 

 

裁判所は,労働者が仕事中に同僚などからの暴行

という災害によって負傷した場合には,原則として,

業務に内在する危険が現実化したと評価でき,

同僚などからの暴行が個人的恨みや,

仕事上の限度を超えた挑発的・侮辱的行為によって生じたなど,

仕事と関連しない事由によって発生したのではない限り,

業務起因性が認められると判断しました。

 

 

そのうえで,男性警備員が,来場者や警備員を含めて

圧倒的に男性が多い園田競馬場において,

近隣で1対1の関係にもなり得る数少ない魅力的な女性である

マークレディに対して,恋愛感情を抱くことも決してないとはいえず,

その結果,男性警備員が良識を失い,

ストーカー的行動を引き起こすことも,

全く予想できないわけではなく,

単なる同僚労働者間の恋愛のもつれとは質的に異なっており,

マークレディとしての仕事に内在する危険性に基づくものであるとして,

業務起因性が認められました。

 

 

競馬場において男性警備員が良識を失って,

ストーカー行為をすることが,

マークレディの仕事に内在する危険が現実化したというのは,

やや強引な気がしますが,被害者救済のために,

裁判所は,業務起因性について,

柔軟に捉えているのだと考えられます。

 

 

京都アニメーションの放火事件では,加害者が,

京都アニメーションへの恨みを語っていることから,

会社と加害者とのトラブルに労働者が

仕事中に巻き込まれてしまったといえ,

業務起因性が認められる可能性があります。

 

 

 

他方,加害者が京都アニメーションへの恨みがなく,

通り魔的に放火して,それに労働者が巻き込まれてしまった場合には,

業務起因性が認められるかは微妙になってきます。

 

 

もっとも,京都アニメーションの放火事件は,

あまりにも悲惨であり,被害者をなんとか救済しないといけない

という世論が強く,京都労働局は,世論に動かされて,

労災認定に前向きになったと考えられます。

 

 

京都アニメーションの放火事件において,労災の認定がされて,

被害者が救済されることを祈念しております。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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