仕事中に犯罪行為にまきこまれた場合に労災が適用されるのか

1 京都アニメーション事件で労災認定

 

36人が死亡し,33人が重軽傷を負った

京都アニメーション放火殺人事件において,

労災の認定がされたようです。

 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54402660V10C20A1AC1000/

 

 

労災と認定されたことで,

お怪我をされた方に対しては,

治療費が労災保険から支払われ,

治療のために会社を休んでいる期間について,

給料の8割が補償されますので,

安心して治療に専念できます。

 

 

 

被災労働者がお亡くなりになった場合には,

ご遺族に対して,遺族補償給付として,

年金や一時金が支給され,葬儀費用も支給されます。

 

 

京都アニメーション事件のような重大犯罪が発生した場合,

被害者に対して,損害賠償責任を負うのは,加害者なのですが,

残念ながら,このような犯罪をする加害者は,

お金を持っていないことがほとんどで,被害者が加害者から,

損害賠償請求を受けるのは極めて困難です。

 

 

また,このような重大犯罪の場合,加害者は,

突発的に犯罪を実行することが多く,会社としては,

犯罪に備えて対策をとることも難しく,被害者が会社に対して,

安全配慮義務(労働者の生命・健康を危険から保護するよう配慮する義務)

違反を理由に,損害賠償請求するのも困難です。

 

 

とくに,京都アニメーション事件のような場合,

会社も被害者なので,被災労働者も,会社に対して,

責任追及をしたくないと考えると思いまし,

仮に,会社が被災労働者のために補償したいと考えても,

会社にお金がないと補償は実現できません。

 

 

2 仕事中に犯罪行為にまきこまれたときに労災を利用できないか

 

 

そのため,加害者でもなく,会社でもなく,

国に補償してもらえないかについて検討してみるのです。

 

 

すなわち,仕事中に犯罪行為にまきこまれてしまった場合,

労災保険が適用されないかを検討するのです。

 

 

労災保険は,仕事をしているときに(業務遂行性),

仕事が原因で(業務起因性),負傷したときに適用されます。

 

 

仕事中に犯罪行為にまきこまれた場合,

業務遂行性は認められますが,

業務起因性が認められるかが争点になります。

 

 

3 仕事中に犯罪行為にまきこまれたときに労災が適用される場合とは

 

 

通達では,「他人の故意に基づく暴行によるものについては,

当該故意が私的怨恨に基づくもの,

自招行為によるものその他明らかに業務に起因しないものを除き」,

業務起因性が認められるとされています。

 

 

 

被災労働者が自分で加害者を挑発して,

加害者から暴行を受けたような場合には,

自業自得ということで,業務起因性が認められなくても納得できます。

 

 

やっかいなのは,仕事中に加害者の私的怨恨による

犯罪行為にまきこまれた場合です。

 

 

古い裁判例ですが,呉労基署長事件の

広島高裁昭和49年3月27日判決では,

農協の窓口業務をしていた女性労働者が,

一方的に恋愛感情を抱いていた顧客に,

職場で刺殺された事件について,

業務起因性が否定されました。

 

 

他方,尼崎労基署長事件の

大阪高裁平成24年12月25日判決では,

競馬場のマークレディが,一方的に恋愛感情を抱かれていた

警備員から殺害された事件について,業務起因性が肯定されました。

 

 

加害者の私的怨恨による犯罪行為の場合に

業務起因性が認められるかは,なかなか判断が難しいです。

 

 

京都アニメーション事件の場合,多くの方が犠牲になり,

被害も甚大であったため,京都の労働基準監督署や労働局は,

被害者を救済するために政策的に労災と認定したのかもしれません。

 

 

なお,地下鉄サリン事件では通勤中や仕事中にまきこまれた

被害者に対して労災が適用されていたようです。

 

 

このように,仕事中に犯罪行為にまきこまれた場合には,

労災が適用されて,被害者が少しでも救済されるようになってほしいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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