平成29年過労死シンポジウム石川会場

平成29年11月16日,石川県で開催された過労死シンポジウムに参加してきました。

大原記念労働科学研究所の佐々木司先生による,「働き過ぎの労働者の疲れ,眠り,つらさをどのように考えるか」という講演がありました。なぜ,働き過ぎると人間が死亡するのかについて,睡眠という切り口から分かりやすく解説されました。働き過ぎによるストレスによって,疲労→過労→疲弊→疾病という過程を経て,人間は過労死に至ります。

 

ストレスを解消するためには,睡眠が重要になります。睡眠の中でもレム睡眠が,ストレス解消に大きな役目を果たします。長時間労働で睡眠時間が減少すると,徐波睡眠が多くなり,レム睡眠が減少し,レム睡眠を出現させようという圧力が強くなり,その際に交感神経が興奮し,血管内皮機能が劣化して,循環器疾患に罹患するリスクが高まります。

 

過労死を防止するためには,7時間の睡眠を確保して,バランスのよい睡眠をとって,疲労回復とストレス解消をはかることが重要であると学びました。人間は,働き過ぎると死亡するということは今では常識になりつつありますが,そのメカニズムに睡眠が深く関与しているのです。睡眠の重要性を痛感しました。

また,全国過労死を考える家族の会の代表の寺西笑子さんの講演を聞き,過労死遺族の壮絶な苦労を知り,労働弁護士として,過労死遺族に寄り添いながら,救済活動に尽力していきます。

 

GPSによる労働時間管理

GPSによって労働時間を管理されていたドーナツ店の店長が,長時間労働により過労死したとして,遺族が会社に対して損害賠償請求をした事件において,津地裁平成29年1月30日判決は(労働判例1160号72頁・竹屋ほか事件),遺族の損害賠償請求を認めました。

 

この事件で特徴的だったのは,店長は,日中30分ごとに位置情報を自動的に送信するGPSを携行し,店長が出社,退社のデータを送信することにより労働時間管理が行われていたことです。

 

未払残業代請求事件や過労死事件では,労働者が何時間働いていたのかが重要なポイントになり,労働者側が労働時間の立証をしなければなりません。この労働時間を立証するために,どのような証拠が残っているのか,証拠をどうやって確保するかについて,労働者側の弁護士は,日々頭を悩ませています。

 

本件事件では,GPSという最近利用が注目されている機器によって,労働時間の認定がされた点が参考になります。GPSのデータから,発症前6ヶ月間にわたり,月平均112時間の時間外労働をしていたことが立証され,店長の業務と死亡との間に因果関係が認められました。

 

本件事件のGPSは,データ送信をした時点に居た場所として記録される地名には誤差があったようですが,労働者が,出社と退社の時間をしっかりと送信していたのであれば,時間が正確に記録されることから,GPSに記録された労働時間は,客観的であり信用できると判断されたものと考えられます。

 

テクノロジーの進歩により,労働時間を立証するための証拠も進歩していきますので,様々な分野に関心を広げていきたいと思います。今は,タイムカードによる労働管理が主流ですが,GPSの精度がさらによくなれば,今後,GPSのデータが労働時間を立証するために必要不可欠になるかもしれません。

ブラック研修

ゼリア新薬工業の新入社員が,新人研修において,研修の講師から意に沿わない告白を強要されたことが原因で精神疾患を発症し,強い心理的負荷があったとして,研修中に自殺したことについて,労災が認定されました。

 

http://www.asahi.com/articles/ASKBB544MKBBULFA02M.html

 

研修の講師から,弱みをさらけ出せと迫られ,新入社員は,同期の社員の前で,吃音であることや,昔いじめを受けていたことを告白させられたようです。

 

新入社員の人格を否定し,それまでの価値観を破壊するブラック研修は,ひどい労働環境でも新入社員が簡単に辞めないように,最初の段階で洗脳させる目的で行われることがあるようです。

 

私も以前,道路で大声で叫ぶ研修等,こんな研修が何の意味があるのかと疑問に思う研修を実施する企業に就職すべきか悩んでいるという相談を受けたことがあります。ユーチューブで研修の動画を見たのですが,たしかにこのような研修をするような企業に就職するべきか悩むのはもっともな気がしました。

 

研修中の自殺で労災が認定されたので,今後は,このようなブラック研修がおかしいと主張する労働者が増えて,社会問題化すれば,ブラック研修が減少していくのではないかと思います。ブラック研修は早急になくすべきです。

高校教師のくも膜下出血死が公務災害と認められた判例

 愛知県内の商業高校の教師が深夜校内で倒れ,病院に搬送されたものの,脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血が原因で死亡したことについて,当該教師の遺族が公務災害認定請求をしたものの,公務災害とは認定されなかったため,公務災害とは認定しなかった処分の取消を求めて提訴し,判決で公務災害と認定されました(名古屋地裁平成29年3月1日判決・地方公務員災害補償基金愛知県支部長事件・労働判例1159号・67頁)。

 

 本件事件では,長時間労働の観点からは,当該教師がくも膜下出血発症の1ヶ月間において,通常の日常の職務に比較して特に過重な業務に従事したと評価することを直ちに肯定することも否定することもできないとされたものの,職務の質的過重性を検討した結果,公務災害が認定されました。

 

 具体的には,当該教師は,情報処理科の主任として,学校内のパソコンの保守管理,全国大会で優勝する情報処理部の顧問,情報処理検定に向けた指導や一日体験入学の準備作業等の業務を行っていました。①担当授業については,多くの科目で複数の指導担当者の取りまとめ役をし,生徒の資格取得に直結し,学校の実績や生徒の就職に影響する授業を担当していました。②部活については,顧問をしていた情報処理部が全国的に優秀な成績を収めており,同様の成績を収めることが期待されていました。③校務分掌について,教職員や生徒のパソコンの故障に対応していました。④その他にも,一日体験入学が次年度の入学者数に直結していました。

 

 以上の当該教師の業務は,精神的負荷がかかるものであったと認定され,当該教師のくも膜下出血の発症と公務との間に相当因果関係が認められて,公務災害が認定されました。

 

 労災では,時間外労働が何時間だったかが,まず重視されますが,時間外労働が労災の基準に満たなかったとしても,労働者の仕事内容が精神的負荷の強いものであった場合には,仕事の量的過重と質的過重のあわせ技一本で労災と認められることがありますので,この両方を説得的に主張していくことが重要となります。

 

 労働問題の法律相談は,労働問題を専門に扱う弁護士法人金沢合同法律事務所へ,お気軽にお問い合わせください。

https://www.kanazawagoudoulaw.com/

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残業100時間超で過労自殺した病院勤務の男性の労災認定

 岐阜県内の病院に勤務する男性が自殺したことについて,多治見労基署が労災と認定しました。

 

 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170920-00000042-mai-soci

 

 男性は,岐阜県内の病院で駐車券処理やOA機器修理等の日常業務の他に,月に3回ほど夜間の当直勤務をし,急患や来院者への対応をしていたようです。男性が使用していた業務用のパソコンや当直勤務の記録を検討したところ,死亡前3ヶ月の残業が月107~148時間にも及び連続39時間の拘束の勤務もあったようです。

 

 夜の時間帯に働くことで,睡眠のリズムが狂い,昼間は寝にくいこともあり,疲労が回復しにくくなります。長時間労働や長い拘束時間が続くと疲労を回復する機会が奪われて,うつ病を発症するリスクが高まります。残業が100時間を超えると多くの場合労災と認定されやすくなります。

 

 本件では,おそらく証拠保全をして,病院にある男性のパソコンや当直の記録を確保して,客観的な証拠が揃っていたから労災と認定されたのだと思います。労災事件では,早期に証拠を確保することが重要になります。

 

 男性は,ライフル競技の選手で,国体の選手強化に向けて岐阜県教委の紹介で就職した経緯があり,今後の労災民事訴訟では,選手としての将来への不安等が自殺にどのように影響したのかが争点になるかもしれません。企業に働きつつ,スポーツを続ける労働者の健康をどうやって守るべきかが問われる裁判になっていきそうなので,注目していきたいです。

 

 労働問題の法律相談は,労働問題を専門に扱う弁護士法人金沢合同法律事務所へ,お気軽にお問い合わせください。

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