変形労働時間制を争う方法2

最近,私が担当している未払い残業代請求事件において,

相手方から,変形労働時間制についての反論がされることが多いので,

労働者側に有利な裁判例を調査しています。

 

 

就業規則に変形労働時間制の記載が少しでもあったり,

シフト表で勤務割が決っている場合には,会社側から,

変形労働時間制の主張をしてくることが多いです。

 

 

 

 

変形労働時間制とは,一定の期間につき,

1週間当たりの平均所定労働時間が法定労働時間を超えない範囲で,

1週または1日の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

 

 

例えば,1ヶ月単位の変形労働時間制の場合,

1ヶ月の期間を平均して,1週間あたりの所定労働時間が

40時間以内に定められていれば,予め所定労働として

特定された日や週の特定された時間の範囲で1日8時間,

1週40時間を超えて労働しても,残業代が支払われなくなります。

 

 

1週間のうち,ある日は9時間働いたけれども,

別の日は7時間働き,その他の日は8時間働き,

2日休日だったとします。

 

 

1日の労働時間が8時間を超えると残業代が発生するので,

9時間働ければ,1時間分の残業代を請求できるのですが,

変形労働時間制が適用されると,1週間の労働時間が

40時間を超えていないので,9時間働いた日の

1時間分の残業代を請求できなくなります。

 

 

このように,変形労働時間制が適法に運用されれば,

残業代は少なくなるので,会社側は,

変形労働時間制の主張をしてくるのです。

 

 

しかし,変形労働時間制は,導入手続,

日々の労務管理が煩雑であり,厳しい要件を満たす必要があるので,

地方の中小企業では,適法な変形労働時間制を導入しているところは,

少ないという印象です。

 

 

本日は,変形労働時間制について,

労働者に有利な判断をした岩手第一事件を紹介します

(仙台高裁平成13年8月29日判決・労働判例810号11頁)。

 

 

変形労働時間制では,各週,各日の所定労働時間を就業規則などで

特定する必要があります。

 

 

 

 

また,シフト表を作成している場合,就業規則において,

各勤務の始業・終業時刻及び各勤務の組合せの考え方,

シフト表の作成手続や周知方法を定め,

各日のシフト表は,それに従って,変形期間開始前までに

具体的に特定しておく必要があります。

 

 

岩手第一事件では,就業規則に職種ごと,

先番,後番ごとの始業・終業時刻及び休憩の時間を定めた上で,

具体的な労働日,労働時間については

勤務割表で事前に特定されていました。

 

 

しかし,裁判所は,変形労働時間制は,過密な労働により,

労働者の生活に与える影響が大きいため,就業規則などにおいて,

単位期間内におけるどの日又は週が法定労働時間を超えるのか

について,できる限り具体的に特定させ,それが困難であっても,

労働者がその日又は週における労働時間をある程度

予測できるような規定を設けておくことが要求されているので,

会社が就業規則の各規定に従って勤務割表を作成し,

これを事前に労働者に周知させただけでは,

労働基準法32条の2の「特定された週」又は「特定された日」

の要件を満たさないと判断しました。

 

 

このように,裁判所は,変形期間中の労働日と所定労働時間の特定を

かなり厳格に要求しており,単にシフト表を作成して労働者に対して,

提示しているだけでは,変形労働時間制は無効となるのです。

 

 

長くなりましたので,続きはまた明日以降に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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