労働条件を変更するための合意とは?

昨日に引き続き,労働条件を変更するための

合意について説明します。

 

 

本日は,合意による労働条件の変更が争われた

宮の森カントリー倶楽部事件を紹介します

(東京高裁平成20年3月25日判決・労働判例959号61頁)。

 

 

この事件では,被告会社が,ゴルフ場でキャディ

として働いていた労働者に対して,

正社員から雇用期間を1年間とする契約社員となること,

賃金について,基本給及び諸手当の大半が廃止されて,

ラウンドに出る場合に支払われるラウンド手当を中心とした

賃金に変更され,退職金が廃止され,

生理休暇が無給になることの説明を口頭でしました。

 

 

 

この説明の際,社長が事前に作成したメモに基づき

数分間の説明をして,その後,

部長による個別面談が行われましたが,

資料が交付されることはありませんでした。

 

 

キャディが,毎月の賃金がいくらになるのか,

雇用期間の1年が経過したら労働契約はどうなるのか,

といった質問をしても明確な回答がありませんでした。

 

 

その後,原告のキャディ達は,キャディ契約書を提出しましたが,

労働条件が不利益に変更されることに合意していないとして,

従前の労働条件の地位を確認するための裁判を起こしました。

 

 

労働契約法8条により,労働条件を変更するには,

労働者と使用者の合意が必要になりますので,

原告のキャディ達と被告会社との間で,

労働条件を変更することの合意が成立したかが争点となりました。

 

 

 

 

会社からの説明は,正社員から雇用期間1年の契約社員に変更すること,

賃金体系の変更による賃金の減額,退職金の廃止,

生理休暇の無給化など内容が多岐にわたっており,

数分間の社長の説明や個別面談での口頭説明によって,

その全体と詳細を理解して記憶に留めることは到底不可能です。

 

 

また,キャディ契約書には,賃金については

会社との契約金額とするという程度の記載しかなく,

いくらの金額となるのか不明な記載となっており,

原告らキャディが賃金がいくらになるのか質問しても

明確な回答がされておらず,キャディ契約書の提出が

契約締結を意味するという説明もありませんでした。

 

 

そのため,裁判所は,以上の事実を考慮して,

原告らキャディと被告会社との間に,

労働条件を変更する合意が成立したとは

認められないと判断しました。

 

 

次に,労働者と使用者による労働条件の変更について

合意がなくても,就業規則を合理的に変更して,

労働条件を変更することが可能です。

 

 

もっとも,就業規則の変更によって,労働条件を変更するには,

①労働者の受ける不利益の程度,

②労働条件の変更の必要性,

③変更後の就業規則の内容の相当性,

④労働組合等との交渉の状況等

が総合考慮されます(労働契約法10条)。

 

 

 

 

本件事件では,賃金規定が変更されていましたが,

①賃金減額率が約27%であり,年収300万円台の

原告らキャディの家計への影響が大きく,

退職金制度の廃止は将来的には実質的な賃金切り下げと評価でき,

②ゴルフ場の経営は赤字であったものの,

企業グループ全体の存立に影響を与えるほど差し迫った必要性はなく,

③原告らキャディらの労働条件を不利益に変更するための

代替措置はとられておらず,

④労働者に対して,十分な説明がなされていないとして,

賃金規定の変更は不合理であると判断されました。

 

 

そのため,原告らキャディについて,

従前の労働条件の地位が認められたのです。

 

 

このように,裁判所は,労働者にとって不利益に

労働条件を変更することについての

会社との合意を慎重に判断しています。

 

 

そのため,会社から,不利益な労働条件の変更を

提示されたとしても,納得できないなら,

合意をしないようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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