労働契約法20条違反を争うときに比較対象となる正社員をどう決めるのか

2019年3月10日のブログで,

メトロコマース事件の東京高裁平成31年2月20日判決を紹介しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201903107683.html

 

 

メトロコマース事件の東京高裁判決は,

正社員と非正規雇用労働者の退職金の格差について,

不合理であり,労働契約法20条に違反すると

初めて判断した画期的な判決であります。

 

 

 

退職金の法的性格については,長年の勤務に対する

功労報奨としての性格があり,原告の契約社員らは,

10年前後の長期間にわたって勤務していたこと,

原告の契約社員らと同じ売店業務の仕事をしていた契約社員が

職種限定社員に名称変更された際に退職金制度が導入されたことから,

正社員の退職金の4分の1相当を原告ら契約社員に対して

支給していないことは,不合理と判断されたのです。

 

 

なぜ,退職金全額ではなく,4分の1としたのか,

根拠は不明ですが,退職金の格差を不合理とした点で,

労働者にとって有利です。

 

 

さて,私は,8月2日に,公益社団法人全国労働基準関係団体連合会

からの依頼を受けて,最近の労働事件の裁判例の解説をする

セミナーの講師をさせていただくことになりまして,

労働契約法20条に関する裁判例の勉強をしています。

 

 

そこで,もう一度,メトロコマース事件の東京高裁を読み直したところ,

3月10日のブログで記載していなかった重要な点がありましたので,

そのことについて,記載します。

 

 

どういうことかといいますと,正社員と非正規雇用労働者の

労働条件に格差があった場合,どの正社員と比較するのかという点です。

 

 

 

例えば,同じ仕事をしている正社員と非正規雇用労働者を比較すれば,

同じ仕事をしているのに,労働条件に格差があるのは

不合理であるといいやすくなります。

 

 

逆に,違う仕事をしている正社員と非正規雇用労働者を比較すれば,

違う仕事をしているのだから,労働条件に格差があっても,

それはしかたのないことであり,労働条件に格差があるのは

不合理ではないという判断に傾きます。

 

 

このように,非正規雇用労働者が,労働契約法20条違反を

主張する際には,どの正社員と比較するのかは大事なことだと思います。

 

 

メトロコマース事件の場合,原告ら契約社員は,

売店業務をしていたので,売店業務をしている正社員と比較すれば,

同じ仕事をしているのに,労働条件に格差があるのは不合理である

という判断に傾き,他方,売店業務以外の地下鉄の車両の運転業務や

整備業務をしている正社員と比較すれば,違う仕事をしているので,

労働条件に格差があっても不合理ではないという判断に傾きます。

 

 

メトロコマース事件の一審判決は,原告ら契約社員と正社員全体を

比較したため,原告らが主張した労働条件の格差について

不合理ではないと判断しました。

 

 

他方,メトロコマース事件の控訴審判決は,

比較対象となる正社員の範囲について,

原告らの主張している売店業務に従事している正社員としたので,

原告らが主張した労働条件の格差について,

不合理と判断しやすかったのだと考えられます。

 

 

メトロコマース事件の東京高裁判決は,

比較対象となる正社員については,原告となる

非正規雇用労働者が特定して主張すれば,裁判所は,

その主張に沿って不合理といえるかを判断するとしました

 

 

比較対象となる正社員を,原告となる非正規雇用労働者が

設定できると判断した点は,今後の労働契約法20条違反を争う裁判で,

労働者が有利に活用できると考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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