化学メーカーにおける検査分析業務と化学物質過敏症の因果関係

化学メーカーに勤務する労働者が,仕事上,

大量の化学物質に曝露して,体調を悪化させてしまった場合,

労働者は,会社に対して,どのような請求ができるのでしょうか。

 

 

本日は,有機溶剤や有害化学物質が発散する劣悪な労働環境で

検査分析業務を強いられたことで,

有機溶剤中毒及び化学物質過敏症に罹患したとして,

会社に対して,安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求をした

化学メーカーC社事件を紹介します

(東京地裁平成30年7月2日判決・労働判例1195号64頁)。

 

 

この事件の原告労働者は,石けん,シャンプー,化粧品,洗剤

などの油脂加工製品の製造販売をする化学メーカーに勤務していたときに,

工場の研究棟において,検査分析業務を行う際に,

試料の前処理や機材の洗浄のために,

クロロホルムやメタノールなどの有機溶剤や化学物質を使用していました。

 

 

 

 

原告労働者が働いていた研究室には,

局所排気装置が設置されていなかったり,

有機ガス用防毒マスクが支給されていませんでした。

 

 

そのような状況において,原告労働者は,

有機溶剤や化学物質を使用する検査分析業務に

約8年間従事していたところ,

頭痛,微熱,嘔吐,咳,蕁麻疹,下痢,全身の倦怠

などの症状が発症しました。

 

 

医師からは,有機溶剤中毒及び化学物質過敏症

に罹患しているという診断が出されました。

 

 

化学物質過敏症とは,過去に大量の化学物質を一度に曝露された後,

または長期間慢性的に化学物質に再接触した際にみられる

不快な臨床症状のことのようで,

発症メカニズムの解明には至っておらず,

決め手となる診断手法も決まっていないようです。

 

 

有機溶剤中毒とは,有機溶剤が人体の特定の器官に蓄積して,

中枢神経障害,末梢神経障害,自律神経障害が発症することのようです。

 

 

この事件では,原告労働者が,検査分析業務に従事していたことで,

化学物質過敏症及び有機溶剤中毒に罹患したといえるのかという

因果関係が争点になりました。

 

 

この争点について,判決では,原告労働者の検査分析業務において,

クロロホルムやノルマルヘキサンなどの有機溶剤が大量に使用されており,

再現実験の結果から,有機溶剤の管理濃度が

許容限度を超えていたことから,原告労働者は,長期間にわたって,

相当多量の有機溶剤に曝露されていたと認定されました。

 

 

 

そして,化学物質過敏症の病態が未だに完全に解明されていないものの,

原告労働者の症状が化学物質過敏症の症状と合致しており,

複数の医師の診断があることから,原告労働者は,

検査分析業務に従事する過程で大量の化学物質の曝露を受けて,

有機溶剤中毒及び化学物質過敏症に罹患したと判断されました。

 

 

この事件では,原告労働者の作業環境における

有機溶剤の濃度を測定するために,再現実験が実施され,

そこでの結果が,因果関係の判断に大きな影響を与えたと考えられます。

 

 

このような化学物質に関する再現実験は,専門性も高く,

費用も高額になりそうなので,どのようにして実施したのかが

大変興味深いです。

 

 

長くなってしまったので,安全配慮義務違反については,

明日以降に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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